130年ほど前に、1年9か月の長きにわたって世界を旅した日本人がいる。岩倉具視をはじめ、木戸孝允、大久保利通、伊藤博文といった明治維新のリーダーたちである。その「米欧回覧」の一行には、中江兆民や津田梅子(津田塾の創設者)といった留学生も含まれていた。まさに、日本のトップエリートたちが集った使節団であったのだ。 著者の泉三郎は、使節団の全行程を数年かけて踏破し、研究を重ねてきた人物である。本書では、横浜港より太平洋を越えて北米大陸を横断、ヨーロッパを歴訪し、アジア各地を経て長崎に帰港した使節団の足跡を、当時の旅の記録書『米欧回覧実記』を中心に、多数の写真、図版、銅版画、イラストなどを引用しながら再現している。さながら当時の各国の様子や人々の暮らしぶりが描かれているガイドブックを見ているような気分になれる。 実は、この使節団には、日本と欧米列国の間で結ばれた不平等条約を改正するための予備交渉という大目的があった。しかし彼らは、高度な西洋文明にカルチャーショックを受け、立ち後れている日本の現状に愕然としたという本音を『米欧回覧実記』の中で漏らしている。とはいうものの、その文明の咀嚼(そしゃく)に努め、さらに各国の貧民街や列強の植民地と化しているアジア諸国の惨状といった、文明の「闇」の部分からも目をそらそうとしなかった彼らの、単なる好奇心を越えた強靱な精神力には敬服するばかりである。その後日本がたどった富国強兵策の行方に思いを巡らせながら眺めたい本である。(朝倉真弓)
「堂々たる日本人」を読んだ方へ
前著「堂々たる日本人」を記す際に用いた絵や写真などの資料が、ふんだんに掲載された本である。
これを観れば、あの内容が具体的に把握でき、より鮮明な記憶として残る事だろう。
楽しめる
タイトルどおり中身はイラストと写真が主でそれらの解説を読むことによって岩倉使節団の旅の記録が理解できる。岩倉使節団の旅程にあわせて書き進められており臨場感がある。ただ、私自身が岩倉使節団のことをよく知らないため、解説の意味が理解できないところもあった。世界各国のその当時の様子を知るだけでも楽しめるが、岩倉使節団に関して知識のある人が読めばもっと楽しめるのではないかと思う。
祥伝社
堂々たる日本人―知られざる岩倉使節団 (祥伝社黄金文庫) 誇り高き日本人 明治維新と西洋文明―岩倉使節団は何を見たか (岩波新書 新赤版 (862)) 堂々たる日本人―知られざる岩倉使節団 この国のかたちと針路を決めた男たち 岩倉使節団『米欧回覧実記』 (岩波現代文庫)
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