英語での交渉はいわば「アウェイ」での戦いに等しい。したがって、まず第1章の「交渉と英語」で、英語による交渉のイロハを頭に入れておくことが大切だ。たとえば、硬軟を使い分ける「いい警官、悪い警官（Good Cop／Bad Cop）戦術」や、ばかばかしいほど高い（ないしは低い）金額で交渉を始める「ハイボール・ローボール戦術」など交渉にはテクニックもあり、これらを知っておくことは相手の手の内を知る参考になる。交渉の準備については、「自社の強みと弱みを把握する」「選択肢を用意する」「交渉相手の文化について調べる」という実践的なアドバイスが並ぶ。ちなみに、交渉相手の文化に関して、「アメリカ人はフランクだが気が短く、ドイツ人はロジックを尊び、中国人は細かいつじつま合わせよりも共に仕事を続けていける友好関係を大事にする」という指摘などは大いに参考になるだろう。

第2章は交渉に役立つ表現集で、「要求する」「提案する」「部分的に同意する」というように、機能別に29種類の表現リストを例文つきで収録している。第3章はケーススタディーで、「予算折衝」「売買契約交渉」「代理店契約交渉」の流れと要点を紹介している。

しかし、いくら交渉のテクニックを身につけても、道具としての言葉がなめらかに出てこなければ実用性があるとは言い難い。本書には付属CDが用意されているので、交渉に必要な表現を耳からもインプットして、使いこなせるようにしておきたいものだ。（成重 寿）

　全29課の仕分けかたは、「原則として同意する」「部分的に同意する」「仮定の質問をする」「即答を避ける」「最終的な返事をする」「相手に決断を促す」「相手の矛盾をつく」「相手を非難する」「交渉を打ち切る」といった具合に、実際のビジネス交渉で起こりうる場面を幅広く取り上げており、その内容の豊富さは高く評価できると思います。

　「阿吽の呼吸」を相手に期待しがちな日本人には、思ったことを本書ほど突っ込んで相手に明確に伝えるのは大変気苦労を感じさせることかもしれません。しかしながら本書の会話例は、英語でのビジネス交渉では日本人が抱きがちな苦手意識を捨てるべきだとはっきり教えてくれています。本書を読みながらしばしば武者震いにも似た興奮を覚えたほどです。

　一方で相手の気持ちを必要以上に傷つけることなく自分の思いをきちんと伝えるための表現上の工夫にも触れており、大変勉強になりました。May I suggest〜?やI would like to remind you that 〜.　さらにはYou appear to be unaware of〜, What might that be?　などの表現は今後実際に使ってみたいと思います。
　

　付属ＣＤの吹き込みは北米出身の男性2人が担当しています。イギリス発音を期待するかたには向かないかもしれませんが、発音は明瞭で、スピードもネイティブなみ。丁々発止といったやりとりで吹き込みがなされているので、聞いていて飽きがこないと思います。
　ただしメインの会話例部分しか録音されておらず、各課の後段に掲げられている例文集「Useful Expressions」は吹き込まれていません。その点は大いに惜しまれます。
ビジネス交渉の拠り所を提供してくれる１冊。

年令を問わず、多少の英語力には自信があり、ビジネス交渉の
機会があるのでさらに英語力を向上させたい方にはお薦めです。
32のダイアログで設定された丁々発止のやりとりは臨場感があり、
CDを聴いているとまるで自分がその場で交渉に臨んでいるような
緊張感を感じてきました。様々な表現も豊富に提供してくれてお

り、また表現上の注意点も参考になりました。